タカブン通信
昇地三郎先生著『ただいま100歳』を読んで
2005年5月17日 社長通信104-2
社長通信104でお伝えしましたように、私も昇地先生の「ただいま100歳」を再読して、レポートと感想をまとめてみましたので、掲載致します。ご一読いただければ幸いです。
1.昇地先生が100年生きてつかんだ「生き方の秘訣」
まず、第1章の100年生きてつかんだ「生き方の秘訣」、即ち10代から100歳まで10年刻みで、昇地先生の経験をもとに、人生の核心をついた、しかも説得力のある肯定的な言葉に感銘を受けた。しかし、現代の親が、自分の子どもに真剣に向き合って、相談相手に成り得ているのか、また、親の背中で教育できているのか、疑問に感じた。その点、昇地先生の父親は、真に教育者であったと感じる。
勉強や読書、仕事等全てのことに対して、集中力を養うことが大切で、なおかつ、復習、確認作業が身につく鍵である。また、人は、人生の目的を持って、一生をかけた熱意と努力を払って生きる。これが人生の一番の喜びであると私も実感している。まだまだ、事業が世のため人のためになっているとは思われないが、このことは、将来に渡って理念として挑戦し続けていく。20代は、青年の血を燃やし、まず「やってみる」。木村さんの言葉にあるように、「やってみなければ、わからない。やったことしか残らない、」のだ。
「人のふり見て、我がふり直せ」。反面教師の人物もいるが、それ以前に、自分自身が他人や部下に模範となりえる存在か、日頃の立ち振る舞いを見直し、日々反省していかなければいけないと思う。
30歳、昇地先生は、愛する脳性小児マヒの息子のために、心理学を学ぶために再度学生になった。「親が子どもに希望を失うと、その日から子どもは駄目になる。親が希望を持って生きていけば、子どもの目は輝いてきます。」「いま自分が幸せだと思って自惚れていると、不幸は予告無しにやって来ます。障害児を持った親に対して理解をするとともに、自分の子どもたちを健康なままにどう育てていくか本当の親心を持ち、家庭をしっかり守って下さい。」子育て中の親や将来親になる人たちに、どうかまず自分の愛する子どもに心の栄養(ストローク)を精一杯与えて欲しいものである。そして、周りの子どもたちにも、愛を与えられる大人になって欲しいし、私もそうでありたい。
40代は、仕事をする時期。自分の人生の勝負をする時である。50歳は、論語で孔子が、「天命を知る」と言っている。昇地先生も、48歳で「しいのみ学園」を創設され、50歳で医学博士、55歳で文学博士というように、50代は、人生の花道。私も、人生の最高の時だと自覚して、事業経営に邁進し、毎日を充実した一日一生を体現していきたいと思う。
60代、海外に飛躍する時。海外の母国語を勉強して、海外の仕事に臨む気概、そして、人生は出会い、出会いを大切にする。私の活力源も、「素晴らしい人との出会いと大自然・町並み・逆境との出会いのマラソン」である。
70代、70くらいで屈してはならない。まだ隠居は早い。しょぼけないでイキイキと何事にも好奇心で関心を持って、どこへでも出て行って、自分を鍛える。80代でもう駄目だと思ったら駄目になる。若さは半分の40代のつもりで頑張ると気力が保てる。考え方次第、自分自身を励ますこと。90代、昇地先生に行動や勉強の限界はない。90代でも海外講演の行脚の連続、渡航まえには、韓国語、ロシア語、中国語の勉強を欠かさない。「今からでも遅くはない」。「自分は中学3年生だ」と15歳の意欲で勉強すればいい。年齢や記憶力のせいにしないこと。昇地先生のように気力を保つには、日頃の健康管理とプラスの生き方・心掛けがとても大切である。
百歳まで生きて、元気に仕事をするために、自立する。自分で出来ることは、他人に頼ることなく、自分でする。掃除、洗濯、料理、買物等、自分自身の五体と脳細胞を使い続けることが、いきいき生きることの秘訣である。「禍を転じて福と為す」、「人間万事塞翁が馬」の気持ちで臨んでいきたいと思う。
2.昇地先生の原点―しいのみ学園ができるまで
①脳性小児麻痺の長男有道さんを前にして、「科学には限界があるが、親の愛情には限界はない」。医者に見捨てられても、親は見捨てない。「子どもを必ず歩かせてみせる。必ず一人前にせずにおくものか」と決意を固めた。
②しいのみ学園建設のため必死で資金を工面してくれた奥さんの一言、「美しい心さえあればいい。お金はいらない」が、昇地先生を奮起させた。さらに、奥さんの「自分の子どもは死なせても、預かったお子さんは死なせられないのよ」という言葉に、教育者としての責任を痛感させられた。また、保母さんの障害児教育の苦悶を前に、「先生は辞められるが、母親は辞められないのよ」という言葉。教育愛より母親の愛、人間愛が教育のスタート地点である。このように、奥さんの力強いサポートがあってこそ、昇地先生は、挫けそうになっても、信念を貫き通してこれたのである。
③「子どもを教育しようというのではなく、子どもが教科書で子どもが教えてくれる。子どもについていけば、そこから教育が生まれてくる。それがしいのみ学園の教育の始まりであった。」
3.人を育てる十大教育原理―しいのみ学園で体得したもの
①活動の原理 子どもを揺さぶると反応が出る。子どもに刺激を与え、マイナスの反応をプラスに変えていくことが教育。新人研修や若手研修にも当てはまるのではないかと思う。どのようにやる気になって、主体的な行動ができるか、そのきっかけ作り、チョット新人の背中を軽く押してやることが出来るか、揺さぶりや刺激でマイナスをプラスに変えていくかが、大切である。
②興味の原理 手作りや教師の愛情、親の愛情が興味を起こし、人間を動かし能力を引き出す。
③許容の原理 許す、叱らない教育。何をしてもいいとすると、子どもはしていいことと、いけないことを考える。新人教育でも、ステップによって、ある許容範囲で任せる勇気と決断力が上司に必要である。
④賞讃の原理 人間は子どもであろうが、大人であろうが、褒められると喜ぶもの。褒めて伸ばす、目をつぶってでも褒めるのが意欲を高める秘訣である。上司には、部下の褒めるところを見出す能力を養うことが先決である。
⑤自信の原理 一人一人個人差があり、経験療法といって要求水準の低いところで、物事を最後までやり遂げさせて、完成・達成の喜びを経験させると、子どもや新人の自信につながるものである。
⑥予見の原理 子どもや新人の習性をわかっていれば、何もあわてることは無いので、先回りして事前に手を打つことが出来る。相手が事前に「何かの信号をだしている」ことに気づく感性が大切である。
⑦変化の原理 マンネリにならず、常に生き生きと接することが大切。子どもに変化を与えると、隠れた能力を引き出せる。新人に対する教育もしかり。常に鮮度が高く、タイムリーな話題、教材、事例を使うと、飽きずについて来る。
⑧集中の原理 子どもがのってきたら、時間を気にせず、とことんやる。規則が教育するのではなく、人間が教育する。新人教育も時間の余裕を持って、業務に縛られることなく集中してできる環境作りが必要である。
⑨共在の原理 先生と子どもが同じ空間、土俵に一緒にいることが大切。勉強も遊びも先生と子どもが同じところに居るだけでいい。これは、会社でも家庭でもいえることではないか。理想は、事務所も工場休憩所も同じ場所、同じフロワーにすることが、風通しの良い職場にできるのではと思う。家庭においても一家団欒はとても大切である。
⑩体感の原理 コニュニケーションの出発点は、スキンシップ。子どもは愛情を皮膚で感じ、人間関係を深めていく。抱っこから、握手、笑顔で挨拶というように、コニュニケーション、特にプラスのストロークが良い人間関係を育てていく上で、とても大切である
4.実践教育
①「3歳が人生の勝負どころ」。言葉を覚えたり、両親や兄弟の顔を認識したりするような感覚は、3歳の時に完成するので、その時に立派な教育をしなければならないし、受けなければならないと、誰もが真剣に考えることが大切である。
②先生は教壇の上で言葉で教えるだけではいけない。先生が生徒の下敷きになることが本当の教育である。社長や上司も新人や部下に対して、OffJTの教育ばかりでなく、OJTや現場教育が大切であり、教育から共育へ、さらに共育から部下から学ぶ謙虚さが肝心だと思う。
③人間関係をつくる時は、まず笑顔。笑いの表情で接すると、良い人間関係が築きやすくなるし、人間関係が修復される。相手に味方だと思ってもらうのが笑顔。味方だと思えば胸襟を開いて付いていこうとする。
④勉強しようという気がないのに、無理に勉強させても駄目。その気を起こすのは、先生や上司の役目。勉強しようという環境づくり、雰囲気づくりが大切。動機付けができれば、自然と勉強に身が入り、身についていく。
⑤先生が誠実であれば、生徒も誠実な心が育つようになる。口で誠実を説き、欺瞞の生活をしていては、指導力は発揮できない。常に人間は、社会生活の中で、誠実と欺瞞、善玉と悪玉、プラス思考とマイナス思考の2つの心が戦っている。その中でいかに誠実を押し通せるか、自分との戦いである。
⑥知能は感情・意志を統制する力を持っている。しかし、情意の力が働かなければ、知は発達しない。偉人伝を読んだり、講演を聴いて「人生は努力しなくてはいかん」と感動したとする。その感動を今度は意志の力で毎日、継続は力なりと継続していく。すると、勉強や仕事がよくできるようになる。こういう流れを踏まえて、知・情・意の3つをバランスよく指導していくのが、教育である。私にとっても、昨年5月、福島社長や宗次会長の講演で感銘を受け、それ以来早朝マラソンの継続が、より充実したプラス思考の毎日を送れるようになってきたと思う。
⑦知能には7つの因子がある。即ち1)記憶、2)算数ができる力(計算力)、3)空間知覚(感覚認知の早さ)、4)言語、語彙数、5)言語の流暢さ、6)認知力(物の理解力の早さ)、7)推理力(目の前になくてもわかる)である。この7つの因子が、子どもの教育上、また人を見る場合にも一つの基準になってくる。それを前提に教育したほうが良い結果が出るようである。
⑧教える側がマメに教育の準備をすると、習う側はちゃんとついて来る。学ぶ側に希望を持たせたり、自分自身の能力やスキルアップにつながるような信頼関係をつくることが大切である。
⑨断崖から落ちかけている子どもや社員をいかに支えるか。先生や上司が忍耐することを示さなければ、生徒や社員に忍耐力は培われない。近道ではなく、思考転換して、ゆっくりと回り道を教えてやることも大切である。
⑩頭の教育をする前に、まず足を鍛える。足からの教育をすると、注意力と継続力が養われる。このような養護教育も、会社での新人や若者の教育にも合致するのかも知れない。
5.恩師の言葉
①人間は「天地の恩」、「人の恩」、「親の恩」、「師の恩」の「四恩」に感謝することが大切である。
②「努力の上に花が咲く」。鈍い者も辛抱努力すると、天才のような働きをすることができる。「努力は第2の天才なり」
③純粋な子どもも成長に従って悪い考えを持つようになる。それをどう教育していくかが教育学の基本である。
④大人になってからでは教育できない。無垢な状態の時に教育すれば立派な人間になる。幼児の教育を誤ると駄目になる。
6.「生涯現役」を楽しむ
①「頭は常に使え。この世で使え。」という母の言葉を「常に本を読め。ちゃんと勉強せよ」と理解して、毎日勉強している。毎日決めた時間に、決めた方法で勉強する。自分でやろうと思って決めたら、やむをえずやる。例外を認めない頑固さも大切。
②長生きするだけでは、能がない。人のお役に立ちながら身体を動かすところに生きる喜びがある。
③その土地の気候風土に合った食べ物が健康を保つ秘訣である。
④自分の身体を健康にするために、60年間続けてきたのが、「冷水摩擦」である。健康と意志鍛錬のために継続は力なり。
⑤「1口30回噛む」という母の教えを90年以上続けている。元気で長生きできる秘訣の1つである。
⑥生涯現役と厳しい顔をするのではなく、生涯現役を楽しむ心が大切である。人生は自分自身との戦い。誰しも一所懸命にやろうとする心と、怠け心を持っている。生涯現役であるためには、自分の身体が健康でなければならない。その為に健康を楽しんで維持していく。
⑦「小さきは小さきままに 折れたるは折れたるままに コスモスの花咲く。」風が吹けば風になびき、苦しいことがあれば、苦しさに耐えた人生。
⑧中国に「しいのみ学級」をつくることが、昇地先生の百歳の仕事である。
⑨10代半ばから「常に前進」。自分自身を励まし、「Go ahead!」と言葉をかけ、自分に鞭打って進んできた。自分自身のために自発的にという気持ちでいれば、興味あるところへ進んでいくことができるのである。「一日一知」―日に一つでも新しいことを知ることは、生きている喜びである。「人生は挑戦」をいつも心掛けている。難しいことを避けて逃げていたら「人生は敗北」である。 自分の怠け心に挑戦して、自分の目標とする方向に、自分自身を高めていくところに生きがいがある。
「人生は自分自身との戦いなり。逆境こそ自分自身を高めてくれる大切な師である。」
以上